クジラメディスン

クジラの腹で暮らしたのは誰だっただろう。
その名はピノッキオ。孤独なおじいさんの作った木のお人形。
大きな体内ですくすく育ち。ある時にもう出て行かないと行けなくなって、同じように流れ着いた仲間たちと、いや、一人だったか出て行こうとする。
早くおじいさんに会いたい。
おじいさんはピノッキオにとってはどんな存在なのか?
お腹の中は心地よくわたしのために与えられた快適空間。外は見えないけれどいろんなものが聞こえたり、感じたりすることでわかっている。
しかし、それは全てを自分に引き寄せて考えてしまうこと。まだ、これは私には関係ないことだという理性はわからない。
全てはわたしに関連付けられて、世界とわたしは一つだし、母とわたしは一つの時代。
母の喜びはわたしのもので、悲しみはわたしを全身で包みこむ。まるでシトシト雨が大地を打つように。染み渡るように。
いつかこの世界を離れてわたしは自分なりに誰かたちと暮らす世界のお腹を作るんだ。
その前にその前にお母さんと離れてしまわないといけない。それは奔放な濁流に乗って放り出されたり、母から自分を引き離した。引き離された。
それは遠くて近い自然、宇宙のはからいの力。
その世界は眩しくて、わたしをそのまま光で包みこんだけれど、その光の質は真っ暗な闇の中で感じた光とは別の。
明るいところで寂しかった。
恥ずかしいような気持ちもあって。
赤ちゃんにも恥ずかしい感じはあるんだね。
赤ちゃんだからこそよりその眩しいばかりの光りが自分を照らし出し、だれが、あなたがどう考えている、どう感じているのかは浸透し、それがすべてのように包み込む。
その暗さに戻りたいと思う気持ちがわたしを支えている。
しかし、そこには何もないことも知っている。
そこにはもうない。あの時のなにかはもうないのだからうちなる光と闇で進んでいけ。
わたしはその光に包まれた闇の優しい真綿のようなフカフカをまとい生まれてきたんだから。
誰かがここを進んだことも知っている。
神秘の螺旋を伝いながらその真綿の毒を解除するんだ。

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